古い句帳から
30代の頃、私は、「緒久 葉子」という筆名で、川柳を書いていました。
「永遠なるものとの結びつきのうちに、言の葉を紡ぎだしていく者でありたい」との思いを込めた名前です。
このブログを読んでくださっている方から、私の川柳や俳句を紹介してほしいとのお便りをいただきましたので、恥ずかしながら、古い句帳からいくつか拾い上げたいと思います。
私の川柳の師は、今は亡き時実新子さんでした。
今日、ここに記す句の殆どは、新子先生が連載されていた朝日グラフの「川柳新子座」に投稿し、掲載していただいたもの。
思いがけず、1990年度の准賞をいただいた句も含んでいます。
現実と虚構を織り交ぜ、心の真実を吐きだすことによって、当時、私は生きていたと思います。
句を作ることはカタルシスであり、自分が生きている証でもありました。
父がいる恵み素直に菫摘む
諦めておくれと撓む雪柳
藤色のスカーフ逢えぬまま戻る
わが胎にいのち蠢く春は逝き
青蛇の隠れたあたり桃たわわ
さみだれにいのち弾けて柘榴燃ゆ
合歓(ねむ)の花ふさに白昼抱かれる
痩せていく乳房にじんと蝉の声
夏落ち葉その行く末は問いもせず
桔梗泣くかに覚ゆれど風の音
コスモスが車窓に揺れて遠い思慕
力なき蝿を手首に休ませる
死にたしと母に言われて磨く窓
泥だらけの豆腐拾われ路地暮れる
さよならは優しい言葉さようなら
もっと明るいユーモラスな句もあるのですが、今日はこれだけ。