放射性物質に関する報道と人々の反応について

放射性物質に関するテレビや新聞の報道、そしてそれを受け止める人々の反応について、思うことがあります。

放射線といっても色々な種類がありますね。福島原発のような事故によって放出させるのは、主にβ(ベータ)線。アルミニウムなど薄い金属板だけでも防げるものです。これは、原子爆弾がさく裂した際に大気中に放出された中性子線とは異なります。低線量の放射線は、自然界にも存在しますし、医療にも用いられていることは周知のとおり。

放射能放射線という言葉にアレルギー反応を示し、健康にほとんど問題がないとされる微量の放射性物質が検出されたとのニュースに、「怖い、怖い」と怯えるのは、賢明とはいえませんね。航空機に乗って海外旅行をしたり、病院でレントゲンやCTの検査をすれば、それ以上の線量の放射線を浴びることもあるわけです。だからといって、旅行を中止したり、病院で必要な検査を拒んだりはしないでしょう。

幼い子供を抱える親御さんや、これから子供を産み育てようとしている人たちのの不安はさぞかし大きいだろうと思いますし、できる限り危険を避けたい気持ちもよくわかります。しかしながら、大人が常に不安を抱き、子供たちをも不安にするような言葉を絶えず口にしながらながら子育てをするのは、精神医学、あるいは社会学的見地から見て、放射線の実害をはるかに超えるダメージを若い世代に与えるのではないでしょうか。阪神・淡路の震災のあと、実際に地震を体験していない世代までもが、周囲から恐怖を伝えられ、不安をいだいて育ったことを思い起こすと、今回も同じ過ちを繰り返さないように、対策を講ずべきであると考えます。

マスコミは、「放射性物質が検出された」と報道する際には、それが人体や動植物に、あるいは環境に、どのような種類で、どのような強さで、どの程度で防ぐことができて、どのような影響を与える量なのか、半減期はいつなのかなども、同時に、しつこいくらいに報道すべきです。もちろん、軽率に、放射性物質の危険性を否定するようなことはあってはなりませんし、定期的な検査や、データの公開を続けていくことは大切です。が、社会的不安を助長するような、中途半端な報道をしているマスコミの在り方には大いに疑問を感じます。

どんなに配慮の行き届いた報道をしても、科学者が良心に基づいて説明をして大丈夫だと言っても、「信用できない」「裏があるのではないか」と思う人は無論いるでしょう。が、そのような人が多勢を占める社会は健全とはいえません。

たとえ政府や関係機関が真実を公表していないとしても、余計な心配をして神経質になるよりも、科学的知識を学びながら、冷静に身を守る方がよいのではないでしょうか。真実にたどり着くには時間がかかるかもしれませんが、根拠もないのに結論を急ぐよりはましです。原発反対派の意見に耳を傾けるなら、同時に推進派の意見にも耳を傾ける必要があります。とかく感情的になりがちな風潮に流されることなく、自分自身で正しい知識を得る努力をし、汚染された環境や物質の処理について、どのように対処すればより早く安全で安定した社会を取り戻すことにつながるのかを考え、行動していきたいものです。テレビや新聞は、そのために役に立つ良質な情報を提供している機関やインターネット上のサイトなどを積極的に紹介すべきでしょう。報道が、「危険」「不安」「恐怖」に偏向することのないようにしてほしいのです。

埋め立てを拒否されたために処理されずに溜まっていく汚泥や、樹皮から放射性物質が検出されたために、「大文字焼」の薪に使用されることを拒否された木材などを、テレビで見るたびに、日本人の非論理的で自己中心的な側面を垣間見るような気がします。
京都で燃やすことを拒まれた木材は、千葉県の成田山新勝寺の9月の「お焚きあげ」で護摩木と一緒に焚かれることになりました。
汚泥の多くは、現段階でも安全上の問題はないとのことです。検出結果についてより詳しく報道し、危険が殆どないことを一般市民に理解してもらったうえで、濃度が低いものから順に、どこかに集めて埋め立て、福島原発事故を記念するような何かを築いていくなどの措置をとるようにできないものでしょうか。


ご参考までに

AtomicEnergy Data Station(原子力発電について、日本語で解説しています。)
http://contest.thinkquest.jp/tqj1999/20159/first.html

放射線医学総合研究所
http://www.nirs.go.jp/index.shtml

放射能 正しく怖がるために 
http://www.sankei.co.jp/netview/yahoo/kdk/110815.html

食品安全委員会放射性物質の食品健康影響評価
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka.html

全国の放射性濃度一覧
http://atmc.jp/