本日、管内閣不信任提出  ―この提出に先立って取られた自民党の動きを振り返る― 

今日、自民、公明両党が、いよいよ内閣不信任案を提出します。
震災前から不信感が募っていた内閣への信頼が増々大きく揺らいでいる今、この不信任案は、たとえ可決されなくても、提出することに意味があると思います。首相は、国会がこれほどまでに自身を批判していることを真摯に受け止め、退陣という選択もありうることを率直に認めるべきでしょう。この時期に、総選挙はすべきではないでしょう。だとすれば、辞任すべきなのです。
被災者のことを考えて、新しい組閣は避けるべきではないかと考えた時期もありましたが、むしろ、被災者のことを真剣に考えればこそ、復興を成功させるためにも、壊れるものは壊れ、新しいものを生み出すときが近づいているのだと感じます。



自民党は、古い殻を脱ぎ捨て、刷新への道をしっかりと歩み始めたようです。
ホームページもリニューアルされ、動きをつかみやすくなりましたので、再度、アドレスをご紹介します。
http://www.jimin.jp/



先日、自民党は、「東日本大震災復興再生基本法案」を提出し、石破政調会長がその提案理由を説明しました。
この復興基本法が、今回の内閣不信任案提出への道具とされることには、石破さんは違和感を覚えておられるようです。
しかし、充実した復興基本法を成立させ、被災地復興のために、より現実的でスピード感のある政府を作ってほしいと望む人は少なくないのではないでしょうか。被災者の中にも、現政府の対応の遅さに苛立ちを覚えている人は多いのです。


石破さんは、被災地を視察した際、女川の避難所に寝泊まりして被災者の声を聴き、自身の政策が間違っていたのではないかと痛感したそうです。
そうして、党内で協議したうえで現状を踏まえた政策を打ち出し、国会の場で誠実に語ったのです。
以下に、その全文を引用させていただきます。

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東日本大震災復興再生基本法案」提案理由説明 自由民主党 石破茂 
ただいま議題となりました「東日本大震災復興再生基本法案」について、提案者を代表して、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。

 冒頭、今回の大震災・大津波によりお亡くなりになられた方々と、そのご遺族に対しまして、深く哀悼の意を表しますとともに、被災地において今なお苦難の中におられる皆様のお気持ちを思い、復旧・復興の任に当たっておられる全ての方々に心より敬意を表します。

 この議場に居る恐らくすべての議員が被災地を訪れ、まさしくこの世の地獄とも言うべき光景を前に言葉を失い、呆然自失の状態に陥ったはずです。被災者の方々の悲痛な訴えをお聞きし、共に手をとり涙しなかった者もまたいないでありましょう。
我々国会の責務は、一日も早く全ての被災者の方々を困窮から救い、被災地を復旧・復興させ、二十一世紀半ばの日本のあるべき姿をこの地に実現させることであると信じます。

 東日本大震災とこれに伴う大津波は、現代を生きる我々日本人がかつて経験したことのない、まさしく未曾有の災害であります。
平成七年、我々は阪神淡路大震災を経験しました。この震災も極めて被害が甚大な、誠に悲惨なものでありました。しかし今回の地震・大津波阪神とは全く様相を異にするものであり、復興にあたっての取り組みも全く新たな観点によるべきことは当然であります。阪神淡路において成功したスキームを今回また踏襲するということは、認識が大きく誤っていると言わなくてはなりません。

阪神淡路大震災の被害は、財政力が他の地域に比べて強い兵庫県、就中主に神戸市に集中したものでありました。国の財政も、当時の国債発行額は200兆円程度でありました。近隣の地域には職場も健在であり、復旧・復興に向けての取り組みはかなり迅速に行われ、神戸を中心とする地域は見事に蘇りました。

しかし今回は、北海道から関東まで、多くの都道県に被害が及び、自治体の多くは財政力が極めて脆弱であり、少子高齢化が急速に進行し、基幹産業であった第一次産業は壊滅的な打撃を受けました。自治体そのものの機能が失われたところも多く、職場もそのほとんどが失われてしまいました。
津波は人々の命、家族の住処(すみか)であった家屋、生活の糧を得る職場、それらすべてを流し去り、後に残ったのはただ大きなマイナスだけです。

加えて、かつて経験したことのない原子力発電施設の事故による被害は現在なお進行中であります。地震津波原発事故、電力不足という四つの事象が連鎖した形で発生した、まさしく我が国にとって未曽有の国難であります。国ならびに地方の財政は極端に悪化し、国債発行残高だけでも阪神大震災当時の三倍を優に超えるに至っております。

こうした中で、今回の大震災・大津波に対応するにあたっては、単なる復旧や復興にとどまるべきではなく、今後の我が国のあるべき姿を先取りする形で、地域の再生、ひいては日本の再生を図っていくことが不可欠であり、そういう意味から、私たちは「復興再生」を目指すべきと考えます。

「復興再生」を円滑かつ迅速に推進していくためには、その基本理念を明確に定めること、復興再生に関する計画の策定その他の基本となる事項を定める必要があります。
加えて、復興再生に関する企画立案及び総合調整とその施策の一元的な実施を行う、強力な権限を持つ行政組織の設置が絶対に必要であります。


 今回提出された政府案では、企画立案・総合調整しか行わない復興対策本部を設置することにとどまっており、また、復興再生に関する計画や資金の確保に関する具体的規定がないなど、既に大震災発生から2ヶ月超が経過する中で提出する法案としては、極めて不十分な内容となっています。
 多くの本部が設立され、多数の内閣参与が任命されて、指揮命令系統に混乱が生じている状況が続いていますが、やっと出てきた法案は、殆ど阪神大震災の時の体制をそのまま踏襲した、いわば「焼き直し版」でしかありません。この二ヶ月は、一体何であったのか。

 このような点を踏まえ、我々の考え方に沿って復興再生が行われるべきであるとの認識に立ち、本法律案を提出することとしたものであります。

本法律案の概要について御説明申し上げます。

 第一に、復興再生に当たっての基本理念を定めております。
東日本大震災からの復興再生は、単なる原形復旧ではなく、「21世紀の半ばのあるべき姿」を目指すことを旨として行われなければならないこととした上で、国は、地方公共団体と協力し、かつ、被災地域の住民の意向を最大限に尊重しつつ、主体的に復興再生を推進することを明記するとともに、国民一人一人の総力と官民の英知を結集して、総力を挙げて復興再生を推進するものとすること、としております。

 第二に、復興再生に関する計画についてであります。
まず、政府は、計画期間を十箇年とする復興再生基本計画を策定することとしております。また、被災した県又は市町村は、国の復興再生基本計画を踏まえつつも、それぞれの県又は市町村の被災状況に応じ、当該県又は市町村の区域における復興再生に関する施策についての復興再生計画を策定するものとしております。

 第三に、復興再生に関する基本的施策を定めております。


この中では特に、資金の確保に関して、徹底的な歳出削減と財政投融資に係る資金や民間資金の活用について定めているほか、政府は、復興再生に係る歳出の財源に充てるために復興再生債を発行することができること、その際には、あらかじめ、復興再生債の償還の道筋を明らかにしなければならないこと等についても明記しております。

 第四に、東日本大震災からの復興再生に関する事務を行う「東日本大震災復興再生院」を設置することとし、その組織編成に関する基本方針を定めております。
この復興再生院は、企画立案・総合調整のみならず、施策の実施まで行うこととし、復興再生に関する事務を一元的に行う機関としております。
復興再生院の職員には、民間の智恵と活力を生かすため、広く行政組織の内外から人材を登用することとし、また被災地域の意向を尊重するため、当該地域の職員等を採用するように特に配慮することと致しております。

加えて、復興再生に関する重要事項について調査・審議するため、復興再生院に設置される第三者機関である「復興再生委員会」の構成員に、被災した地方公共団体の長等が含まれることを明記しております。

 以上が、本法律案の提案理由説明及びその概要であります。

国は地方の意見を最大限に尊重しつつ、主体的にその役割を果たさねばなりません。被害が多くの県に広域的に跨るのみならず、新しい東日本像、更には日本の国家像を実現するためには、これは至極当然のことであります。

阪神大震災において、復興費用は国費で約五兆円でありましたが、今回は最低でもその二倍、おそらくは三倍以上になると予測されます。
欧州の信用不安問題が示す如く、財政と金融の相関関係はきわめて密接であり、復興債を発行するに当たっては震災対策以外の経費を可能な限り節減することは当然であり、復興債の消化、償還についてきちんと道筋゜を示さなくてはなりません。
震災前からわが国の財政は既に危機的でありました。日本だけが特別であると考えるのは極めて危険であります。

復興再生院は、企画立案・総合調整のみならず、実施までその任務とし、ワン・ストップですべてに対応できる強力な官庁、言うなれば「スーパーエージェンシー」として位置づけられるものです。
省庁間の縦割り構造は、この危急存亡の秋(とき)に当たっては断固これを排さなくてはなりません。

この点について、先の予算委員会で私が菅総理に質した際、総理は「権限をどちらが持つかということに対して、霞が関は非常に敏感な性格を持っている。権限の切り分けの作業には相当程度の力が必要であり、これをやりきるには、まさに大きな政治力が必要となると思っている」と答弁されました。まさしくその通りです。

私は五月三日、女川町の被災地を訪れ、その惨状を目の当たりにし、その夜は避難所に泊まって被災者の方々の声を聞かせていただきました。

「誰に言えば私たちの思いが通じるのか。政治家がたくさん来て、話は聞いてくれるけれど、ちっとも何も前に進まない。ここに言えばすべてが解決する、そんなところが欲しいんだ。あっちに行け、こっちに行け、我々が何であちこちに行かなければならないんだ。政治は本当に私たちのことが分かっているのか」
その声が耳に残って片時も離れません。

総理がいみじくも口にされた「権限について持っている霞ヶ関の非常に敏感な性格」を乗り越えることこそが、政治の役割です。そのためにこそ我々は、これも総理が言われた言葉ですからそのまま使いましょう、「強い政治力」を発揮し、被災地の声に応えなくてはなりません。

国民の資産でもある官僚組織を、スタッフとして信頼関係を構築して使いこなすこともまた、政治の役割です。
何の相談もせず、独断で結論だけを口にし、混乱だけを生じさせることを政治主導とは言いません。
「強い政治力」をはき違えてはならない。一歩間違えば、これは法治国家や民主主義体制の破壊に繋がりかねないものであることを、よく認識すべきなのであります。
霞ヶ関の悪癖である「権限争い」を、今こそ正しい意味の政治主導で乗り越えなくてはなりません。
「屋上屋を重ねる」「二重行政になる」この二つこそ、官僚組織の常套句です。しかし、権限が束ねられることによってこそ窓口が一本化され、地方にとって使い勝手の良い組織となるのであります。

霞ヶ関の論理で動くのか、地方の論理で動くのか。我々はここを強く認識すべきなのです。官僚組織の抵抗を怖れるあまり、これに阿るようなことがあっては断じてなりません。

「全ての行政は国民のために行われる。全ての責任は政治が取る。あらゆる賞賛と栄誉は、現場に与えられる」
これこそが、我々が目指す政治と官僚組織との関係であります。この真逆の、「全ての責任は現場に負わせ、賞賛と栄誉は政治に与えられる」ようであっては、官僚組織は機能せず、国民は不幸になるばかりです。

国民に対する真摯な気持ち、被災地・被災者に対する誠意。強い使命感と情熱、官僚組織との本当の信頼関係があれば、これができないはずがありません。
もしそれがないのなら、もはや政権を担う資格がないことを、自ら明らかにしたに他ならないのです。

自由民主党は発災以来、全党的な議論を積み重ね、この思いで本法案を提出致しました。
何卒、議員各位のご賛同を賜りますよう、心より希い(こいねがい)まして、私の提案理由の説明と致します。