オバマ大統領中東政策演説

昨日行われたオバマ大統領の演説をイスラエル各紙が報じた記事が、次のように要約されています。

シオンとの架け橋・イスラエルニュースhttp://www.zion-jpn.or.jp/


オバマ大統領が中東政策関連演説でパレスチナ国家創設は1967年の境界線を基本に領土交換すべきで、国連でイスラエルを「非合法化しようとするパレスチナの試みは失敗すると語った。(H,P,7,Y)

*上記発言に、ネタニヤフ首相は多くのイスラエル人をパレスチナ側に残して「自衛不能」な1967年の境界線まで撤退する事を拒否。ハマスは現実的な新しい提案は何もないと失望を表明。(H,P,Y)

米大統領の発言をアッバス議長は歓迎し、パレスチナ内部やアラブ指導者との「緊急」会議の招集を計画。エジプトの国連代表も具体的な計画が無い事を指摘しつつも支持を表明。(H,P,Y)



NHKニュースは、以下の通り、オバマ大統領の演説を次のように報道しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110520/t10013001581000.html
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オバマ大統領が中東政策演説
5月20日 8時15分
中東で民主化を求める市民の動きを受けた混乱が続くなか、アメリカのオバマ大統領は、中東政策について2年ぶりに演説を行い、経済支援を強化することでこの地域の民主化を後押しする方針を明らかにしました。

オバマ大統領は、19日、中東政策について演説し、「思い切って改革を実行する国にアメリカは最大限の支援を行う」と述べ、中東各地で進む民主化の動きを後押しする姿勢を強調しました。そのうえで、特に経済面での支援を強化する考えを示し、まずは民主的な政権への移行を進めるエジプトに対して、債務の支払いの免除や新たな融資など、最大で20億ドル(日本円で1600億円余り)の経済支援を行う方針を明らかにしました。その一方でオバマ大統領は、民主化を求める市民を弾圧して政権の維持を図っているリビアやシリアの指導者を厳しく非難しました。ただ、アメリカの同盟国で王室による独裁的な政治が続くサウジアラビアについては一言も触れず、一貫した政策を示せないアメリカの苦しい立場を浮き彫りにしました。また、暗礁に乗り上げている中東和平問題については、パレスチナ側に対して、穏健派のファタハ武装闘争を続けてきたハマスの統一指導部の下で暴力を放棄するよう迫る一方、イスラエルに対しては、占領地への入植活動をやめるよう改めて求め、双方に歩み寄りを呼びかけました。オバマ大統領としては、中東政策の見直しを迫られるなか、経済支援や和平の仲介を通じて、中東地域で各国の信頼をつなぎ止めたいねらいがあるものとみられます。(NHKニュース)

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ニュースから知る限り、オバマ大統領が中東諸国での民主化を後押しする発言をし、経済的支援を約束したことは、エジプト、リビア、シリアなどの現状を打破しようとする人々を勇気づけたことでしょう。しかしながら、中東諸国の人々にとって、「民主化」とは何なのか。それは、いまだ明確ではありません。民主主義のあり方は、世界の様々な地域で、異なるものなのではないか、と、私は考えています。

パレスチナ問題については、イスラエルパレスチナ双方の歩み寄り、妥協が必要なのは当然ですが、私としては、今回のオバマ大統領の発言は、あまりにも非現実的な提案だと感じています。交渉のために、まずは思い切った提案をし、徐々に現実的な対話を進めようとする戦略なのかもしれませんが、和平のためにイスラエルが最大限譲歩するとしても、1967年のラインに戻ることはほぼ不可能でしょう。現在の国際情勢にあって、イスラエルが、そのラインでは自衛できないとするのは当然ではないでしょうか。たとえイスラエルが入植を中止し、1967年のラインに国境を定めると譲歩したとしても、ハマスやほかの過激な組織が、「イスラエルを殲滅させる」との綱領を撤回しない限り、現実的な解決はありないでしょう。そもそも最大の問題は、ハマスイスラエル生存権を認めていない点です。このことについては、マスコミはほとんど触れません。ハマスファタハが組み、それとイスラエルが交渉することを世界がイスラエルに求めるのなら、それは、世界が、せん滅綱領の撤回を明確に宣言していないハマスをも、公式の交渉相手にせよとイスラエルに迫っていることになります。これは、相手の生存権を暴力で否定する集団を、世界が認めてしまうことを意味します。ハマスヒズボラが、イスラエルの存続をそうやすやすと認めるとは到底思えません。明日にはオバマ大統領とネタニヤフ首相の会談が行われるとのこと、なんらかの建設的な進展を祈りつつ、情勢を見守りたいと思います。


1967年のラインを不服として、イスラエルの生存を認めず、度重なる戦争やテロを仕掛けてきたのはアラブ側の方です。イスラエルパレスチナ側に有利な妥協案を提示し、和平条約を結ぼうとした時にも、すでに国連が承認している国家であるイスラエルの存続を認めないとして、争い続けました。その結果、イスラエルが管理地を広げることになったという過去を直視せず、1967年のラインに戻れというのは、やはり無理があるのではないでしょうか。日本では誤った認識のもとに報道されることの多い中東問題ですが、難民発生の責任をアラブ側がイスラエルだけに帰し、それを口実としてイスラエルの存続を認めないという姿勢を取り続ける限り、解決はあり得ません。そうではなく、「難民」の国際的な定義を明確にした上で、パレスチナが独立することによって本当に安定した社会を築けるよう、イスラエルを国家として承認すべきです。イスラエルに対する偏見を持つ一部のジャーナリストや市民団体は、思い込みを振り払って歴史を学び、現地で本当に公平な取材や活動をしてみてはいかがでしょうか。

真の中東和平への道のりは、残念ながら容易ではないでしょう。ハマスは、イスラエルを敵として憎み、殺すことを称賛する子ども向けのアニメ番組を制作し、子どもたちに見せています。また、自爆テロを奨励しています。このようなパレスチナでの教育が、平和を求める教育へと改革され、意識を高めた市民によって充実した民主主義が機能するようにならなければ、平和は実現できないものだと思います。

*私は、メシアニック・ジューや「シオンの架け橋」とは一切関係ありません。誤解のないよう、ここに記しておきます(Johanna)。