世界中にありがとう!だけど隣人は・・・  ―都市近郊で暮らす者の不安―

東日本大震災で日本は大打撃を受けています。けれどもこの出来事を通じて、世界中の国々や人々からあたたかい支援をいただき、日本がいわば「宇宙船地球号」の乗員であることを実感しています。真の友人が地球の裏側にもいるのだと思うと、世界中に向かって、「ありがとう!」と叫びたい気持ちです。

首都圏に住む私は、大きな被害は受けなかったものの、余震の続く中、原発事故の影響もあり、やはり不安な日々を過ごしています。今回、国内外の友人・知人・親族から「大丈夫?」と声をかけていただき、必要なものを送っていただいたりしました。特に阪神大震災を体験した人たちからは、大きな慰めと励ましを受けました。感謝しています。

テレビなどで、東北地方の方々の地域の密接な結びつきや、震災後の一致団結の様子を拝見するにつけ、感銘を受ける毎日です。自衛隊消防庁、警視庁の方々、劣悪な環境でも事故の被害を最小限に食い止めるために必死の作業を続ける東電の方々にも感謝しています。日本人の底力を感じます。

一方で、もし首都圏直下型地震津波が起こったとしたら、日頃隣人とのコミュニケーションが少なく、町内会などのつながりも希薄な都会やベッドタウンの人々は、東北地方の方々のようには一致団結できないのではないかとの懸念もいだかずにはいられません。まさかのときに、近所の人たちが信頼・協力できるような社会を作っていきたいと思います。それには、一人ひとりの心がけや努力も大事ですが、国や自治体が、まさかのときに市民一人ひとりが持っている能力を生かしあう「民間防衛」のシステムを作っていく取り組みが必要なのではないでしょうか。

子どもの頃住んでいた北陸の町では、大雪のとき、町内で協力して除雪作業を行ったり、火災や犯罪防止のためにパトロールをしたり、日頃から隣近所のお年寄りに声をかけ、なにかしらお手伝いをしたりするのが当たり前でした。東京の下町に住んでいたときも、ご近所の方とは気取らないお付き合いがありました。けれども、都市周辺の新興住宅街に引っ越してきた今は、近くに数少ない友人はいるものの、隣人たちの冷淡な態度に驚くばかりです。皆、自分と自分の家族を守ることに必死で、周囲に困っている人がいないかと見回し、声をかけるゆとりなどないのでしょう。

都市の防災計画には、道路やビルの耐震強化、津波の防御壁の建設などは盛り込まれているでしょうが、住民同士の心の交流や協力を深めるための方策は考慮されているのでしょうか。東日本大震災によって浮き彫りにされた「都市とその周辺で生活する者の不安」を、放置しておいてはいけないと考えます。